英語学習を始めてしばらく経ったけれど、全然英語が上達している気がしないと感じている方は少なくありません。上達が実感できずにモチベーションが下がってしまいがちですが、言語習得研究の立場からすると上達していないわけではないのです。今回は、英語学習を始めてしばらく経った人が陥りがちな、上達が実感できない現象について、詳しく解説していきます。

英語学習の「U字カーブ」とは

英語学習の「U字カーブ」は、正式には「U字型発達曲線」と言います。これは、母語習得や第二言語習得における、学習初期からの発達段階（正確性）をグラフ化した際に、Uの字を描くように変化することから名付けられたものです。

つまり、SLA（第二言語習得研究）の観点では、学習初期段階では正確性が高いけれど、学習を進めるにつれて正確性は徐々に下がる。さらに学習を進めることで、再度正確性が上昇するというように、U字型を描くように正確性が変化していくということです。

そして、冒頭で触れた「英語学習を始めてしばらく経った人が陥りがちな、上達が実感できない現象」は、このU字カーブの下降期または底の時期にあたる発達段階に位置しているために見られる現象です。

「U字カーブ」が起きる理由

単純に考えると、学習を進めれば進めるほど、インプット量も知識も増えていくので、正確性は右肩上がりに上昇しそうなものですが、実際にはU字カーブを描くといいます。その理由は、各学習段階における学習者の状態変化にあります。

学習初心者は正確性が高い

一見すると、英語学習を始めたばかりの人なのに正確性が高いはずはないと思われがちですが、英語学習を始めたばかりの学習初心者は、学んだインプットに対し、意味的なかたまりである「チャンク」単位で覚え、それを真似しようとします。つまり、正しいことを丸暗記しているような状態です。

新しくインプットされた正しい内容をそのまま真似してみるため、当然ながら正確性は高いという結果になるのです。

学習すると正確性は下がっていく

英語学習を始めてからしばらく継続していくと、多くの知識が蓄積されていくと同時に、得た知識から一定の規則やパターンを見出そうと試行錯誤します。すると、数多くの知識が混在することで勘違いをしたり、見出したと思ったパターンが間違っていたりするので、ただ正しいものを真似していた初期から見ると正確性は下がっているように見えるのです。

さらに学習を続けることで正確性は再上昇

正確性の低迷期でも学習を続けると、さらに多くの知識がインプットされます。すると、下降・低迷期に行っていたパターン抽出の精度が徐々に上がり、以前の間違いは修正されていき、正確性は再び上昇していくことになります。

上達を実感できなくても継続することが重要

英語学習に限らず語学習得においては、正確性はU字型発達曲線を描いて変化します。そのため、英語学習を始めてしばらくすると、間違いが増えてきたり、英語力の上達を実感できない時期がやってきたりすると思います。しかし、そこでモチベーションを下げて英語学習から遠ざかってしまっては、せっかく成長過程の段階にいるにもかかわらず、その先の成長を諦めてしまうようなものです。

そうなってしまっては、今まで積み重ねてきた努力が水の泡となってしまうので、たとえ上達を実感できなくても、英語学習を継続することが重要です。

とはいえ、目に見える上達がないとモチベーションが下がってしまうのも理解できます。モチベーションが下がっていると感じたら、今自分はU字型発達曲線の底にいるから上達が実感できないだけで、学習を継続することでU字カーブの上昇フェーズに向かうことができると考えるようにしましょう。

また、気分転換をしてみたり、一緒に学習する仲間を見つけたり、英会話スクールを活用して講師に相談してみたり、学習を継続できるように工夫してみるのも効果的です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。英語学習をしていく中で上達が実感できない瞬間はやってくると思いますが、それは第二言語習得理論の観点では、自然な成長過程であると考えられています。なので、たとえ上達しないと思ったときでも、根気よく学習を継続するようにしましょう。